突然辞めたくなる!看護師の悩み燃え尽き症候群

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看護師の悩み燃え尽き症候群

燃え尽き(症候群)」、別名「バーンアウト(シンドローム)」。

看護師にはつきものの現象だと言われて久しい。

ただし、一度は仕事に燃え上がった人でなければ燃え尽きることはない。なぜ「燃えた」ほどの人が「尽き」なければならなかったのかを思うと、「燃え尽き」という字面にどうしょうもないやるせなさを感じるからだ。

あなたは、そうは思わないだろうか?

燃え尽きの概念

燃え尽きという概念を学術論文の中で最初にとりあげたのはFreudenbergerだと言われている。

Freudenbergerは、「エネルギーや心身の力や諸資源を使い過ぎてしまったために、衰えたり、すり減ったり、疲れ果てたりすること」という辞書に見られる燃え尽きの定義が、まさに他人の援助や危機介入を行なうような仕事をする人たちに見られる現象であることに気づいた。

そして、燃え尽きの兆候や、燃え尽きに陥りやすい人の傾向や、予防策などを示したのがこの論文である。

その後、燃え尽きに関する関心が高まり、研究が進むことになるが、それに多大な貢献をなしたのがMaslachである。

MBl測定ツール

燃え尽き矢吹ジョーMaslachらが1981年に開発したMBI = Maslach Burnout Inventoryと呼ばれる燃えつき状況を測定する質問紙は、世界中で用いられ、燃え尽き状況に関する実証データが蓄積きれることになった。

Maslachは燃え尽きを「情緒的消耗感(emotional exhaustion)、脱人格化(depersonalization)、個人的達成感の低下(reduced personal accomplishment)を示す症候群であり、人に関連する仕事”をする個人の中で発生しうるもの」と定義し、MBIはこの3つの因子を測定するようになっている。

情緒的消耗感とは、「疲れ果て尽きてしまったように感じることで、翌日を迎えるエネルギーが残されていないような状況」をいう。

脱人格化は、「他人に対して、突き放したような、人情味のない、機械化した反応をすること」をいう。

さらに、個人的達成感の低下とは、「(サービスの)提供者が、受け手に対応するだけの能力が不適切であることに対して絶え間ない苦痛を感じ、その結果、自分を”できそこない”だと決めつけさえすること」をいう。

これらの症状を呈し、慢性的な疲労状態となり、仕事に対して無関心で突き放したような態度をとるようになり、仕事が非効率的になっていくと言われている。

MBlの他にもさまざまな測定ツールが開発され使用されており、燃え尽きに関してほかなり研究が進んでいる。
バーンアウト現象はFreudenberger (1974)の報告以降,対人サービス職者の職業性ストレス反応として注目を集めるようになり,この分野の重要な研究テ=マとなつた. 1980年代になると, Maslach & Jackson (1981)はバーンアウトを“人を相手に働く過程において心的エネルギーを使い切つてしまい,相手に与えるものはもう何もないという情緒的な疲弊が生じ,クライエントに対して否定的で冷淡な態度をとるようになる,またクライエントに対する自己の仕事ぶりに否定的評価を下すようになる現象である”と定義づけ,バーンアウト測定尺度(Maslach Burnout Inventory:以下MBIとする)を開発した. MBIは三つの概念:“Emotional Exhaustion(情緒的疲弊感)”,“Deper-sonalization(非人間化)”,“Personal Accomplishment(個人的達成感)”からなる尺度として,多くの研究に使用されてきた。

http://en.wikipedia.org/wiki/Burnout_(psychology)

「看護師の燃え尽き」の原因

看護師の人間関係などのストレッサーところで、四半世紀に渡って燃え尽きについて議論されてきたにもかかわらず、現場でいっこうに減る気配がないのはどうしたことだろうか。

燃え尽きが起きる原因は様々な角度から検討されている。たとえば、性別年齢、経験年数、性格などの個人属性による燃え尽きの程度の違いや、仕事の性質、仕事の負担感、役割ストレス、同僚との人間関係などのストレッサーが燃え尽きに影響する程度などである。

燃え尽きの原因は多岐にわたっているにしろ、はっきりしているのなら、それらを軽減・除去できるように対処すれぱよいはずだが、なぜかなくならない。

燃え尽きがなくならない3つ原因

燃え尽きは看護教育を通して再生産されている

一つ目は、燃え尽きは看護教育を通して再生産されているという考え方をみてみよう。

相手に対してやさしくあること、共感すること、献身的であることなどの価値観が看護専門職にとって不可欠であるということが教育を通して埋め込まれていくことを考えると。

「専門職業人としての必要な知識や技術を習得するということは、その専門職業に求められる理想主義的な価値観を埋め込まれるということであり、過言すれぱ、バーンアウトを引き起こすような個人特性を作られる、とも考えられる」。

このような価値観を看護教育の中にうまく融合させながら、学生の職業意識を刺激することを”焚き付け”と呼ぶそうだが、その焚き付けが繰り返し起きているから燃え尽きが再生産されるという見解である。

雇用者側が燃え尽きを軽視、対策をしていない

2つめは、雇用者側(組織側)が燃え尽きを軽くみているという考え方である。Maslach & Leiterは、燃え尽きはその人に問題があるからではなく、その人の働いている社会環境に問題があるから発生するのだと強調し、組織が燃え尽きを軽視していることを指摘している。

軽視する理由の代表的なものは、燃え尽きを個人の問題だとみなしてしまうことである。個人の問題なのだから、個人が対処すればいいじゃないかと一蹴されてしまう。

これと類似するが、雇用者側には責任がないという考えも軽視されている理由の一つである。

もしも何か起きたら組織として対応すべきことはあるが、起きる前に対応すべきものではないと考えられているために、予防策がとられない。その他に、燃え尽きなどたいしたことはないという考えがある。

たとえ燃え尽きが起きたとしても、当人が重傷を負ったり死んでしまったりするわけではない。放っておいたからといって法律違反に問われることもない。だから、組織はそれほど気にかけないでいる。

さらに、なんだかんだいっても組織としてはどうすることもできないという投げやりな気持ちがある。燃え尽きが起きたら休みをとるとか、カウンセリングを受けるとかの対処が考えられるが、結局のところ、組織としてはその手助けはできても、実際に解決をはかるのは個人次第だと考えられている。

新人看護師のリアリティ・ショックは燃え尽きの一種

3つめに、決して積極的ではないが、特に1年目の新人看護師の燃え尽きを肯定する考え方があることを紹介したい。

Freudenberger は、燃え尽きは仕事開始後1年位で見られると述べているし、リアリティ・ンヨックの第2期の症状が燃え尽き徴候と類似していると指摘している。

すなわち、組織に入って間もない状況で生じるリアリティ・ショックによる強い情緒的消耗は、燃え尽きの一種だと考えられる。

そのリアリティ・ショックを肯定するとはどういうことかを説明しよう。

リアリティ・ショック必要なのか?

看護管理者の研修でリアリティ・ショックのことを話す看護管理者の研修でリアリティ・ショックのことを話すときに、必ず受講生に聞く質問が2つある。

それは、「リアリティ・ショックはなくなると思うか」と「リアリティ・ショックはない方がよいと思うか」である。

前者に対しては、なくなるという方に手を挙げる受講生は1割程度で、なくならないという方には5割くらいが手を挙げる。後者の問いに対しては、ない方がよいと思うという人が3割で、あってもよいと答える人が4割くらいである。

あくまでも概算であるが、これまで何度も同じ質問をしてきたが、ほぼこのような傾向だ。
リアリティ・ショックはあってもよいと答えた人にその理由を聞くと、「看護の仕事はたいへんなことの連続なので、これくらいのショックは受けておいてもらわないと後に続かない」「後からショックを受けられると対処がたいへんなので、みんなと同じ時期にショックを受けて免疫を作っておいてほしい」「看護実習とは違うのだから、現場を知ってショックを受けるのは当たり前」といったような意見が聞かれる。

捉えよりによっては冷たく聞こえるが、一度はショックを受けることで現実に即した期待水準を設定できるようになる。その方が、理想を抱き続けて消耗していくよりはましだと考える方が現実的かもしれない。

「看護師の燃え尽き」からの回復

新人はもとより、現場で頑張ってきた人が燃え尽きて辞めてしまうのはもったいない。当人にとっても、組織にとっても、看護全体にとってもマイナスだ。なんとかそれを食い止めるには、理想だけではなく、より現実に近い状況を基礎教育の中で実感させることが必要だろう。

また、現場においては、看護の仕事は感情労働だと割り切って燃え尽きることのないように感情の管理をすることも必要だと思われる。さらに、燃え尽き始めている人の変化を周囲が敏感に察して、フォーマルにもインフォーマルにも早期に対処することが望まれる。

当の本人は、目の前のことに追われて必死だから、自分が燃え尽きの一路をたどっているということに気づきにくいからだ。

しかし、さまざまな対処を講じても、先述したように燃え尽きは完全にはなくなりそうにない。すると、次に浮かぶ問いは、燃え尽きた人は回復するのだろうかである。

重度の燃え尽きあるいは仕事関連ストレスからの回復過程

第1段階:問題を認める

第2段階:仕事と距離を置く

第3段階:健康を回復させる

第4段階:価値を問い直す

第5段階:ふさわしい仕事を探す

第6段階:決別し変化する

Bernier は、重度の燃え尽きや重度の仕事関連ストレスに陥ってか一ヶ月以上仕事を離れ、その後回復してまだ4年未満の人たち36名にインタビューを実施している。

分析に用いられたのは、ヒューマンサービス職に就いていた20名のデータで、分析の結果から、事態への対処には連続する6つの段階があることが示された。

最初は、自分が普通でない状況に置かれていることや、それを克服しなければならないことを認める段階である。

次は、職場から心理的に距離を置くことで、自分自身の中での葛藤や、時間に追われることや、組織との闘いから解き放たれる段階である。

第3段階は、緊張を和らげ、何か楽しみを見いだすことで健康を取り戻していく過程にあたる。

第4段階では、これまでの仕事の仕方を振り返り、仕事環境について非現実的な価値観を取り除いていく。そして、具体的にできることが何なのかを、自分の性格を査定しながら決め、新しい価値観を形成していく段階である。

第5段階は、これまでの職場環境に代わる場所を探し始める時期にあたる。

第6段階は、受けてきた仕事ストレスを断ち切り、変わっていく段階である。

Bernierによると、20人の対象者のうち、同じ職場の同じチームに復帰したのは一人だけで、ほとんどの人は職場を変えたり、パートタイムに切
り替えたりして対応している。

どの人も第6段階まできて満足感と安定感を得たようだが、重度の仕事ストレスを抱えた人がすべてうまく回復するわけではないだろう。もしかすると、インタビューに応じた人たちは、回復に至ったので研究に協力できたのであって、インタビューを断った人たちの中には、うまく対処できなかった人たちがいるかもしれない。

それに、研究協力者20人の回復過程は、1年から3年もの年月がかかっている。その期間のつらさを考えると、やはり、燃え尽きは避けるべきだ
と思う。

まとめ

「誰が援助者を援助するのか(Who will help the helper?)」。

この古くからある問いに対して、Maslachは燃え尽きに関する知識を携え、変革の方向性を導けば、その脅威を減らすことはできると締めくくっている。

すでに燃え尽きに関する知識は蓄積されている。Maslachのこの言葉を信じるならば、次は、変革に向けた大きな動きが、時を置かずして始まらなければならないということだ。

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