看護師不足が原因で社会損失年間600億円!看護師は辞めれない

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医療イメージ

看護師は、患者からの「ありがとう」という言葉に支えられている。

重症だった患者から「あなたの笑顔のおかげで元気になった」と言われ、嬉しさのあまり涙を流す。それがやりがいにつながり、「だから看護師は辞めれない」と働き続ける。

そうした魅力ある看護の仕事は、少子高齢化が進む今、まさに社会的にも必要とされているが、離職が止まらず大きな社会損失となっている。

この記事では看護師不足の現場と国の見解を読者の方々に是非知って頂きたい。もし患者として病院に行ったならば看護師への見方、接し方が変わると思います。

1-1 看護師はどのくらい不足するのか

東京医科歯科大学医療政策学医療情報システム学の伏見清秀教授と、国立病院機構本部総合研究センター診療情報分析部の小林美亜・主任研究員による「長期的看護職員需給見通しの推計」では、社会保障国民会議による「医療・介護費用シミュレーション」によって示されたシナリオを精査しました。

18歳人口の減少や離職者、復帰者などの問題を考慮したうえで修正をかけ、2025年までの看護職員の需給見通しを試算している。

同推計の修正シミュレーションによる看護職員の必要数を「NI」、そのNIシナリオの看護人員配置条件についてワークライフバランスや諸外国の状況を参考にした必要数を「N2」とした。

すると、看護職員の不足数は、社会保障国民会議のシミュレーションの「Aシナリオ」でも4万6067~19万8718人、「BIシナリオ」でも7万6299~26万2612人、「B2シナリオ」で4万416~42万1515人、「B3シナリオ」で3万4188~45万3070人という見込みとなり、すべてのシナリオで需要が供給を上回る結果となった。

社会保障国民会議のシミュレーションの「Aシナリオ」

社会保障国民会議のシミュレーションの「Bシナリオ」

1-2 東京だけで7500人の看護師が不足している現実

また、東京民医連では、2009年3月に、都内の病院の看護配置状況を調査。200床以上の病院でDPC(診断群分類)制度導入を検討している看護配置基準「10対1」が52病院、合計1万9779床となり、それらの病院が同「7対1」体制をとると、都内だけで4000人の看護師が不足すると試算した。

東京都の需給計画は2006年時点で2011年に3565人が不足するとされており、「7対1を考えると実際のところ7500人が不足するのでは」(東京民医連)と指摘する。

1-3 介護分野でも看護師ニーズが高まっている

看護師ニーズは病院だけでなく介護分野でも求められており、日本医療労働組合連合会(本医労連)でも、「看護職員は200万人体制が必要だ」と、1998年から主張している。

1-4 自治労総合政治政策局の意見

自治労総合政治政策局 (社会保障)は「地方の自治体病院は「7対1」を諦めないか、「10対1」で我慢するかのせめぎあい。「10対1」を最初から諦めざるをえない僻地(へきち)や離島の問題もある。

2025年問題まであと10年。看護職が200万人必要と言われるなかで、年間に病院看護職員の純増が期待できるのは1万5000人程度。どうやってあと65万人増やすのか。厚労省は、そこに向けて十分な検討を行っているのか、疑問だ」と指摘する。

1-5厚労省は看護師不足を認めていない

まとめると、厚労省は依然として「看護師不足」を認めていないが、前述したように必要絶対数が不足しているのは明らかだ。前途の記事、看護師の結婚が厚労省の超越で偽装退職理由NO1に進化でも看護師の離職率について触れているが、その職場の苛烈さは凄まじいのひと言につきる。

労働条件の苛酷さばかりが取り上げられ、雇用者側も、雇用される方も「辞めたい」という言葉に過剰に反応してしまう状況も有ります。看護師不足もあり、それが待遇改善に繋がるのであれば、大変ありがたい。
しかし「辞めたい」という気持ちと、看護師自身が向き合いすぎてしまっては、心のゆとりがなくなり、患者さんと向き合うことも難しくなります。
ナース辞めたい!本音は好きだから転職までだね、から

さらに医療は高度化し、以前なら助からない命も救えるようになった。その分、看護の必要性は増す。また、患者がより高齢化することで、合併症を伴い、認知症による夜間の徘徊も増えていため、手がかかるようになった。

医療訴訟が増えるなかでは看護記録などを精密に保存する必要性もあり、書類作成の業務も増える。つまり、年々看護師の業務は増大するばかりなのだ。

2-1 看護師の負担増の現状

診療報酬は在院日数が短いほど保険点数が高くなるため、急性期病院では重症患者が高速回転している状態だ。

厚労省「病院報告」(2010年)によると、一般病床の平均在院日数は2002年の22.2日から2010年は18.5日と短縮した。在院日数の短縮化は、患者の入退院の準備に追われることにつながり、看護職の負担となっている。

日本看護協会(日看協)によれば、「7対1」の病棟に30人の看護師が配置されていたとして看護師1人が看る患者数は昼間で3.5人、夜間は14人となる。

2-2 中堅看護師の離職意識が高まれば看護は崩壊する

夜勤に看護師が3人入ったとしても、救急搬送の受け入れがあったり、夜間の徘徊や急変があれば対応に追われる。1人で患者42人を看ることも珍しくなく、現実を見れば、看護師不足で常に現場は悲鳴を上げているのだ。

詳しくは、看護師勤務体制から学ぶ心身の疲労回復の9原則でも解説しているが、勤務交代制によって生活が不規則になり、体調が崩れやすいので、医療事故にも繋がりやすい危険にさらされている。

大病院では20代の看護師が多くを占めているが、都市部の大病院では毎年7人に1人が離職している。

日看協の「2009年看護職員実態調査」では看護職の離職率は全体で11.9%、新卒で8.9%となっており、中堅の離職意識が高まれば、今なんとかして持ちこたえている現場を維持することが困難になる。

2009年看護職員実態調査の離職率の結果

2-3 看護師が毎年10万人が辞めていく理由

「2009年看護職員実態調査」から、毎年10万人以上が離職しているということがわかるが、その理由として考えられる20代~30代の悩みのトップは「医療事故を起こさないか不安である」だ。

40代後半から50代前半は「業務量が多い」が首位を占める。

2-4平均超過勤務時間は23時間

背景として、圧倒的な忙しさがある。有給休暇取得率は2001年の8.2日から2009年は8.4日とほぼ横ばいになっている。

有給休暇取得率は46%で、5割以下にとどまる。平均超過勤務時間は2009年は13時間24分と2001年比で1時間21分減少したが、同協会の他の調査からは勤務時間外の院内研修や看護研究も含めた平均超過勤務時間は23時間24分と、本来は勤務と見なされるべきことが時間外となって負担になっていることがわかる。

有給休暇取得率の調査結果

ちなみに、自治労、保健医療福祉労働組合協議会(通称へルスケア労協)が2009年8月に発表した「看護職員の労働と健康に関する緊急実態調査報告書」(有効回答9756)は、2労組が同じ項目で調査をした初のものとなるが、時間外労働のうち半数しか申告していないことがわかった。

ある大病院では、看護部長が残業抑制のため各病棟の師長を管理している。

看護師一人一人の残業時間が棒グラフになってパソコン上でリアルタイムに情報が流され月30時間以上の残業になると、師長は「看護部長から監査が入るからやめて」と言う。

このほか、実際に1日5時間もの残業をしていても月10時間までしか申請できないという実態もあり、正確な残業時間が表に出にくい現状になっている。

3-1 社会損失は年間600億円

3-2 そもそも看護師が離職すると、どれだけの社会損失があるのだろうか.?

看護師の離職による社会損失について、日看協の小川忍常任理事に尋ねると、

「看護師の3割が免許をもちながら看護師として働かないで潜在化している実態があり、病院の採用、教育コストなどを考えると年間で480億円の損失となる。病院以外の診療所や准看護師なども含めると少なくても年間500 ~600億円の損失に膨らむのではないか。また、新卒の看護師の離職に限っていえば、新人の9%が離職することから、1人当たりの看護師養成費用を300万円と仮定し、病院の採用・研修コストが年間1人当たり100万円とすれば、合計で約144億円の損失と考えられる」と話す。

3-3患者の不利益はどうなるのか?

このほか、金額にできない社会損失も大きいことも見逃せない。

小川氏は「看護師の離職が背景となって生じる医療事故、それによる訴訟や賠償費用はもろん、看護師不足によって看護の質が低下すれば、患者に不利益となる」と指摘している。

社会全体にとっても、働き方の改善で離職を食い止めることが急務の課題となることとは明らかだ。

3-4 家庭の不利益も生じる

それには、看護職のワークライフバランス(WLB)だけでなく、そのパートナ;や若い夫婦を支える家族、社会全体のWLBの実現が必要となる。

看護師の夫もまた、妻の就業継続を保持しようとすると、仕事か子育てか、あるいは正職員から非正規になるかという二者択一に迫られている。

3-5 実例1

葉県内の自治体病院で働くAさんは、介護職の男性と結婚。2歳の子がいる。

院内保育はあるが、病児保育をしていないため、子どもが熱を出すと休まざるを得ない。アパートから5分くらいのところに夫の実家があるが、両親はまだ現役で働いているため頼れない。

夜勤が重なれば夫婦のどちらかが休んで子どもの面倒を見ることになる。Aさんが職場復帰する時に、夫がアルバイトに切り替え、Aさんの扶養家族に入った。

夫の給与は正職員でもボーナスがなく月給16~17万円。アルバイトになっても月給15万円で大きく変わらない。一方の看護師Aさんは月給25~27万円で年収300万円になるため、Aさんの雇用を優先した。

 3-6 実例2

親の看護や介護も子育てと同様に、夫婦のどちらかのキャリアが断たれてしまう。

50 代の看護師、Bさんは同居する母親が認知症となった。母親は夫の姿が見えないと電話をかけ続けるようになった。

1時間でも離れると、思い出したように大根をたくさん切ってしまい、ガスの火は付けっ放しなし。台所があやうく火事になりかけたため、目を離せなくなった。

夫婦の収入を比べると看護師のBさんのほうが高かったため、夫が仕事を辞めた。子育てや介護に勤め先が寛容でなければ、夫婦のどちらかの職が奪われるのが現実だ。

まとめ

病院の損益分岐点がギリギリであれば当然、看護師もギリギリの人数に減らされる。

十分な休暇をとることができる前提での人員確保は難しくなり、長時間労働、低賃金につながり、結果、看護師は疲れ果て、退職して現場には戻って来ないというバーンアウト(燃え尽き)現象が進行している。

不利益は看護師、看護師の家庭だけではなく病院にかかる患者、医療の充実さえ損なわれる恐れがある。


この記事は「長期的看護職員需給見通しの推計」(厚生労働省)の資料、画像を参考、出典いたしました。

 

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