社会に還元する看護師の起業

新たな事業を起こすという言葉の響きは、臨床の現場では聞きなれないだけに、何かとてつもなく大きなことをしなくてはいけないと思われそうだ。しかし、最初のアイディアはごく身近にある。

看護師の起業の後押し

欧米の例だが、実習で使う人体模型や使い捨て喀痰バックの開発が、看護者によって行なわれているし、絵柄付き、あるいはカラフルなユニフォームを販売するSCRUBS社は、白衣に飽き足らないと感じた看護師が設立している。

そもそも日本は起業活動が低い国である。18歳から64歳までの起業活動の国際比較をみると、37カ国中、日本はなんと最下位だ。

知的所有権、アイディアを元に起業を

それに輪をかけて、日本の看護者は社会に飛び出し自らのアイディアを活用することには躊躇がみられる。その理由として、組織内雇用が前提になっている看護者にとって、アイディアは自分だけのものではなく皆(病棟)のものだという考え方があることや、自分のアイディアが簡単に他人や企業に使われても気にならないという知的所有権の意識の乏しきなどが考えられる。

看護の力を示す起業

しかし、もしも看護が培ってきた知恵や経験や技術が広く社会に還元できれば、きっと人々の生活を豊かにできるはずだ。総務省の調査によれば、創業希望者は高学歴の若年男性に多いが、実際に創業に至るのは、学歴は高くなくても中高年の女性に多いことが明らかになっている。

女性が創業を困難だと感じる理由の一つは、経営に必要な知識の不足である。看護者であっても、経営の知識を得る機会があれば、年齢や性別に関わらず起業の可能性があることはすでに複数の事例「このサイト「看護師のキャリア」について」で示したとおりだ。

自らのキャリアを豊かにし、看護の力を社会に示すのに起業をする看護師がもっと増えていいと思う。

社長になった看護師の事例

自分が社長になるなんて1年前には想像もできなかった。

社長になった看護師

あれよあれよという間の出来事だった。人間についてもっと深く学びたいと思って大学を探し始めたのが2年前。哲学とか心理学とかを幅広く勉強したいという気持ちがあったから、文学部がいいのかなあって、そんな感じで大学案内を眺めてた。

そうしたら、社会人の学習を助けるための14条特例っていう制度があることがわかった。この制度を使えぱ、看護師を辞めずに昼間は働いて、夜と土日中心に開講している授業をとれるということだ。願ったりかかなったり、ってことかと舞い上がってしまった。

無事、入学できたし、外来への異動希望もかなえてもらったはいいけど、やっぱり勤務と学校を両立するのは、かなり大変だった。それでも新しく色々なことを学べるのが嬉しかった。

そんななかで、本当に偶然選択した科目が「基礎経営学」だった。先生は、最初のガイダンスのときに「自分ならどんな経営をしたいのかをイメージしながらこの講義を聴いてほしい」と言われた。

そんなこと言われても、スタッフ看護師の立場で病院経営なんててできるわけないんだから困るよ!、っていいうのが正直なところで、こんな科目は私が取るようなものではなかったんだって思った。

ところが講義を聞いているうちに、別に病院経営でなくてもいいってことに気づき、レストラン経営だって駐車場経営だって、本屋の経営だっていいんだと思えぱ気が楽になってしまった。

在宅サービスでも、託児所でもいい、そう思ったら講義が楽しくなってきて、後期には土曜日に開講している「起業論」を取るこにした。そこでのレポート課題が、「ビジネスプラン」つまり事業計画書なるものを立てることだった。

だから、否が応でも自分なりのビジネスを考えざるを得なくなってしまった。それが今の会社の原型である。クラスでの発表が先生の目をひいて、本当に起業してみないかという話になった。

先生からは立ち上げを支援する団体をいろいろ教えてもらうことができ、それに追い風って吹くもんで、会社法が変わった。つまり、会社を作りやすくなったんだ。

まだ設立2か月の会社だけど、さすがに3足のわらじはしんどいから、病院は辞めようと思っている。


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