転職を考える看護師が意外と知らない内科の事情

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内科看護師

内科への転職を考えている看護師のみなさん。転職の理由は内科が楽そうだから?外来のクリニックなら夜勤もないし、休みもとれそうなので転職するならやっぱり内科でしょ!って思うひとは多いはず。でも、本当に楽ができると思いますか?

内科を受診する患者さんは、ほとんどと言っていいくらい抱えている疾患は1種類じゃありません。糖尿病、高血圧、肥満と脂質異常症、腎臓病、肝硬変、心疾患、脳血管疾患、認知症などの複合疾患を抱えており、さらに患者の多くは後期高齢者です。

戦後すぐに生まれたベビーブーム世代3500万人が後期高齢者になる2025年には、3人にひとりが高齢者となり、その1割が認知症になると予測されています。内科への転職を考えるなら、高齢化と慢性病の関係を知っておかないと後悔することになりかねませんよ。

1-1 患者の大半が高齢者で複合疾患

日本人の死因は、がん、心臓病、肺炎、脳卒中でおよそ7割を占めており、肺炎による死者は9割が高齢者といわれています。がん、心臓病、脳卒中も死者の多くが高齢者で、これらの病気は単独ではなく複合して発症することが多いのです。

日本人の死因

出典:日経メディカルWebサイト

日本人で最も患者の多い病気は、高血圧性の疾患で900万人を超えています。まさに国民病ですね。次に多いのが糖尿病270万人、脂質異常症190万人、心疾患160万人、がん150万人と続きます。ぜんそく100万人、う蝕(虫歯)190万人、歯周病270万人と骨折などを除けばほとんどが内科の領域で、しかも慢性病が大半を占めています。

主な傷病の総患者数

出典:厚生労働省 患者調査の概況

また、病院やクリニックに入院している患者の年齢は80代前半が最も多く約19万人、次に多いのは70代後半の17万6千人です。外来患者は少しだけ若く、最も多いのは70代前半の82万人、次が70代後半の約80万人です。80代になると外来患者が減って入院患者が増える。外来患者の多くが高齢化と共に病気を悪化させて入院患者へと移行しているのだろうと思われます。

年齢階級別にみた施設の種類別推計患者数

出典:厚生労働省 患者調査の概況

1-2 高齢化社会の到来と2025年問題

1960年代半ばごろ日本の人口は20~64歳が57%を占めており、19歳以下の若者世代が37%、65歳以上の高齢者はわずかに6%程度でした。2012年になると20~64歳の生産者世代は58%とあまり変わりませんが、19歳以下が18%に激減、反対に65歳以上は24%に増えました。これが2050年になるころには高齢者と若者が完全に逆転してしまうと予想されています。

高齢化社会

出典:総務省ホームページ

また、1970年ごろ若者世代だったベビーブーム世代は2015年に高齢者世代の仲間入りを果たし、2025年には後期高齢者となります。そのとき、後期高齢者人口が全人口の30%を占めるようになることから2025年問題と呼ばれています。

日本の将来推計人口_h24_01
日本の将来推計人口

出典:国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト

超高齢社会の到来に伴い、高齢者医療費も増え続ける一方ですが、医療費が増えると国民の税負担が増えるだけでなく、医療費の財源確保のために診療報酬が引き下げられることが考えられます。診療報酬の引き下げが病院経営を圧迫し、医師や看護職員の待遇に影響することは間違いなく、2025年問題は私たちにとっても他人事ではありません。

年度別診療種別医療費の状況

出典:厚生労働省 後期高齢者医療事業状況報告

2-1 長寿化と健康寿命

1960年代半ばごろ、65歳以上の高齢者は全人口の10%にも満たない少数派でしたが、2013年には25%となり4人に一人が高齢者という高齢社会に突入、今後も2040年ごろまで高齢者人口は増え続けると予想されています。

一方で少子化に歯止めがかからなければ、日本の総人口は減少し続けるため、人口全体に占める高齢者の割合は増加を続け、2060年にはおよそ40%が高齢者という事態に至ることが危惧されています。

高齢化の推移と将来推計

出典:内閣府 高齢社会白書

なぜ高齢者人口は増え続けるのでしょうか?その理由は日本人の長寿化にあります。戦後まもない1950年、日本の平均寿命は女性61歳、男性58歳でした。それがわずか10年後には女性70歳、男性65歳へと驚異的な伸びを見せています。

現在、日本の平均寿命は女性87歳、男性80歳で、世界的にみてもトップクラスの長寿国です。特に女性は2位のスペインに2歳近い差をつけての長寿世界一となっています。

日本の平均寿命

出典:WHO/世界保健機関 世界保健統計

日本の平均寿命は今後も伸び続け、2060年には女性90歳、男性84歳まで長寿化すると考えられています。このとき65歳以降の平均余命は男性22年、女性28年となり、日本人の高齢期は一段と長くなることが確実視されています。

平均寿命の推移と将来推計

出典:内閣府 高齢社会白書

しかし、日本には長寿化を手放しで喜べない現実があります。ひとつは、少子化によって生産者世代である64歳未満人口が減少していくことです。少子化に歯止めをかけなければいずれ日本という国がなくなってしまうのではないかとすら思えるほど、人口減少は急激に進むものと予想されます。

もうひとつが高齢者の健康寿命についての問題です。日本人の平均寿命が延びる一方で、健康な状態にある高齢者の年齢との間に大きな開きが生じています。その差はおよそ10歳ほどもあり、高齢者の余命の最後の10年はなんらかの傷病により、健康を損なったまま送らなければならない状況です。

健康寿命と平均寿命の推移

出典:内閣府 高齢社会白書

また、75歳以上の後期高齢者のうち23%が介護を必要としており、8%が要支援となっています。後期高齢者のおよそ3割が健康を損ない、自立した生活が難しくなっているのです。

要介護認定の状況

出典:内閣府 高齢社会白書

2-2 加齢と生活習慣病

生活習慣病は長い年月をかけて少しずつ病気になっていくので、気づいた時にはすでに発病していることが多いものです。かつては生活習慣病に至る前に天寿を終える人が多かったのですが、皮肉なことに平均寿命が延びたことによって生活習慣病を発病する人口が増え続けています。

一般には、生活習慣病と聞くと働き盛りの中高年を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際にはそのほとんどが高齢者だということは医療関係者ならおわかりでしょう。また、生活習慣病の予備軍も寿命の延伸と共に高齢化しているのです。

例えば、厚生労働省による国民の健康・栄養調査において、糖尿病が強く疑われる「糖尿病予備軍」は男女とも70歳以上が最も多いのです。

糖尿病が強く疑われる者の割合

出典:厚生労働省 平成25年度国民健康栄養調査

生活習慣病はその発症時期からすると「高齢者の病気」と言えなくもありません。しかし、病気の芽はもっと早い時期に芽生えており、病気を予防するための正しい生活習慣を身につけるのは、若ければ若いほど効果が上がります。

2-3 認知症との関わり

2015年現在、日本の認知症患者は500万人を超えていると推定されていますが、患者数は増加の一途をたどっており、厚生労働省のシミュレーションでは2025年には700万人を超えると予想されており、高齢者の5人にひとりが認知症になることになります。

認知症の人の将来推計

出典:厚生労働省 認知症施策推進総合戦略

認知症にはいくつかの種類がありますが、最も多いのはアルツハイマー型認知症で、一説には認知症の約半数を占めるといわれています。この病気がなぜ起こるかはわかっていませんが、アミロイドベータやタウといったたんぱく質が凝集し、細胞毒性を持つことで脳細胞の死滅と脳の委縮をもたらすという説が有力視されています。

アルツハイマーの次に多いのは脳血管性の認知症で、脳梗塞や血栓などの後遺症によって認知機能の障害をきたす病気です。しかし、実際にはアルツハイマーと脳血管性の認知症が併発している病態が多く、はっきりとした切り分けができないのが実情です。

アルツハイマー型認知症

脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症

出典:川口メディカルクリニックホームページ

いずれにしてもアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症で認知症全体の7~8割を占めていることは間違いありません。そしていずれの認知症も生活習慣病やその予備軍において発症リスクが有意に高い、とする報告が数多くあります。

特に、糖尿病とインスリン抵抗性はアルツハイマー病のリスクを3倍に、肥満も一般的にアルツハイマーのリスクを高めるといわれますが、それとは別に肥満自体がアルツハイマーと同じくらい脳委縮をもたらすという報告もあります。

高血圧は脳血管性認知症のリスクを3~4倍に高めるといわれていますし、脂質異常症は脳梗塞の発症因子であり、後遺障害として認知症をもたらすリスクが高い。これらの生活習慣病は認知症をもたらし、認知症を悪化させます。生活習慣病の治療は生活習慣の改善が第一ですから、認知症の進行は生活習慣病の治療を一層むずかしくさせます。

アルツハイマー型認知症の経過

出典:奈良県立医科大付属病院 認知症疾患医療センターホームページ

まとめ 内科への転職を考える看護師のみなさんへ

冒頭に述べたように、日本においては患者のほとんどが内科疾患で、さらにその大半が生活習慣病です。また、患者の多くが高齢者であることもお分かりいただけたと思います。印象としては、漠然と「そういうものだ」と感じておられた方も多いでしょう。

重要なポイントは、生活習慣病はある日突然発症するのではなく、何十年もかけて健康な状態から病気へと進んでいくということです。私たちが外来や病棟で接する患者さんは、自分が病気と気づかないうちに、あるいは「このままでは病気になる」ということを自覚しつつも、生活を改められず病気に至った人たちなのです。

病気を予防するために、もっと早く自分の体の変化に応じて生活習慣を改めるべきだったのです。結果として病気になってしまい治療を開始しましたが、残念なことに患者の多くは高齢ということもあって、再び健康体に戻れる人はごくわずかです。

そうした、完全に治癒する見込みのない患者の治療に対するモチベーションをどのように維持するのかが、生活習慣病治療治療のむずかしさだと思います。認知症があれば、なおのこと治療は困難を極めるでしょう。

私たち看護師も、外科や急性期の病棟と違って、患者さんが回復していく姿を目にすることはできません。患者は長く終わりのない治療を、死ぬまで続けなければならないのです。

ですから、内科の看護師は患者の病気もちろん、治療を続ける患者さんの心の在り方にも気を配り、一緒になって苦しい治療を続けなければなりません。私たち看護師は病と闘う患者の戦友となって、あるときは励まし、ある時は叱咤し、あるときは優しくいたわる、そういう看護をしなければならないのです。

どうでしたか?内科が思うほど楽な診療科ではないことをお分かりいただけたでしょうか。しかし、まぎれもなく内科は日本の医療の中心であり、最も充実させなければならない診療科のひとつなのです。

私たちもいずれ年を取り高齢者となりますが、我々の世代は間違いなく今よりも高齢者人口は多いはずです。そのときのためにも、今から礎を築いておくのは素晴らしいことだと心に銘じて、ぜひ内科の看護師を志していただきたいと思います。

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