東京の病院に求人を求める看護師はサバイバル覚悟で臨め!?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
看護師_求人_東京

日本で最も人口の多い東京都は、病院数と診療所数でも日本一だ。また、毎年の新卒看護師の就職数もダントツで多い。しかし、医療現場での看護職員は相変わらず不足しているのが現状で、そのぶん求人数も増え続けているのだが…。

実は東京都の中でも病院や診療所の偏在による医療格差が広がっており、この先看護職員の人余りが起こる可能性もある。さらに、大病院が診療報酬欲しさに7対1看護導入で看護師争奪戦を繰り広げあげくに起きた医療費の増大を封じ込めようと、厚生労働省は7対1看護病床の口減らしに乗り出している。

このため、今後は都心部の病院で看護師の余剰が生まれる一方で、現在も十分な人数を確保できていない市区では看護師不足が解消されない懸念があるのだ。

求人を求める看護師には相変わらず人気の高い都心部の病院だが、今後は、東京における病院の看護師求人は減少し、訪問看護や老健施設が主となる可能性が高い。そのような状況下で看護師が病院で生き残るためにどうすればよいのか。

1-1 東京の医療施設充実度

東京には646の病院と12,758の診療所があり、いずれも日本一の施設数だ。病院の数は全国の7.6%にあたり、同じく診療所数は12.7%にも相当する。

東京の医療施設数の推移

出典:東京の医療施設数の推移(東京都福祉保健局HP)

全国の医療施設数推移

出典:全国の医療施設数の推移(厚生労働省HP)

しかし、人口10万人あたりの病床数で見てみると、状況は一変する。東京は人口あたり病床数の全国平均を大きく下回り、あろうことか47都道府県の下から5番目というレベルの低さだ。しかも、東京だけでなく神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県も人口当たり病床数が軒並み低く、愛知県を除けば東京都とともに最下位から5番目までを独占している。

病院病床数

病院病床数_タイトル
都道府県別病院病床数

出典:全国の医療施設数の推移(厚生労働省HP)

1-2 東京都の人口分布と医療施設

東京都の人口は、23区で最も多い世田谷区の88万人を筆頭に、練馬区71万6千人、大田区が約70万人、足立区と江戸川区が約68万人と続く。逆に人口が少ないのは、東京駅のすぐ西側に位置し、丸の内と霞が関を擁する千代田区4万7千人が23位で最下位、駅東側に位置し、日本橋や銀座のある中央区12万3千人が22位だ。

全国でも有数のビジネス街や商業地区を有するこの2区を除くと、23区で最も高齢化が進んでいる台東区の17万6千人が目立って少ない。人口ランキングで台東区のすぐ上位にある荒川区、港区、渋谷区、文京区はいずれも20万人を超えている。

高齢者、特に後期高齢者人口が多いのは世田谷区の8万人、これに続く練馬区、足立区、大田区が約6万5千人でほぼ同程度である。地図上に分布させてみると、城南の世田谷区と大田区、城西の練馬区、城東の足立区となり、高齢者は23区の外側に集中していることがわかる。

この4区に続いて後期高齢者人口の多い区は、江戸川区、板橋区、杉並区、葛飾区、江東区、北区であり、見事に23区の外側に環状を成す。

東京23区

出典:東急リバブルホームページ

この分布を見る限りでは東京の看護師需要は環状7号線沿いに多そうなのだが、23区内に住む人は、区を越境して都心部の病院に通院、入院する患者も少なくない。しかし、今後は東京23区においても医療の地域連携、かかりつけ医の推進により状況が変わるものと思われる。

けれども、区によって医療施設の数にはばらつきがあり、かかりつけ医と支援中核病院の連携推進がスムーズに進むかは不透明だ。

医療施設数

たとえば、後期高齢者の多い4区の中でも世田谷区には高度専門医療センター、国立病院、都立病院、共済病院、公益法人病院が各1施設ずつあり、診療所も足立区の倍以上の数となっている。対する足立区は病院数こそ多いが、公的病院は1施設もなく、47病院中45施設が医療法人によるもので、4区の中で唯一地域医療支援病院がない。

病床数でも300床以上の病院は足立区に3施設しかないが、世田谷区には7施設あり、うち2施設は500床を超える大病院である。

1-3 東京23区内での医療格差

世田谷区の1日平均在院患者(入院中の患者)数は約4,200名、足立区は約5,000名である。外来患者の1日平均はどちらもほぼ5,500名と差異はないようにみえる。しかし、これを人口10万人あたりに置き換えると、世田谷区の1日平均在院患者数が約600名なのに対し、足立区は2,500名に相当する。外来患者は世田谷区がおよそ800名、足立区はおよそ2,700名だ。

医療従事者の数も大きく異なる。世田谷区の常勤700名、非常勤320名に対し、足立区では常勤360名、非常勤270名である。医師の総数が少ない上に非常勤医への依存度が高いことがわかる。

看護師の人員についてはさらに格差が広がっている。世田谷区は看護師の実人員が3,200名で常勤換算しても3,100名ほどだ。准看護師は実人員340名、常勤換算290名である。対する足立区の看護師実人員は2,300名弱だが、常勤換算にすると2,000名に目減りする。

准看護師は実人員830名で常勤換算700名となっており、足立区では看護師の労働条件が過酷で、准看護師への依存度が高いことがうかがえる。このように23区内での医療格差にも大きな開きが生じているのだ。

2-1 全国の中での東京

あるインターネットのサイトで看護師求人情報を検索してみたところ、東京都の求人は2700件であった。これに対して、神奈川県では1,400件、大阪府は1,100件という結果となった。やはり看護師の求人は東京に偏在しているようだ。

ちなみに、別の看護師求人情報サイトで、日勤のみ可、保育室完備、日曜祝日休みの条件で検索してみたところ、東京では3件ヒットした。しかし、東京以外の府県ではヒット数はゼロだった。

日本の看護師不足は相変わらずで、偏在の影響もあるがまだまだ実数が足りていない。厚生労働省の第7次看護師需給見通しによると、平成27年には165万人の需要が見込まれるのに対して約1万人の看護師不足が予測される。

看護師需給見通しと就業者数

出典:厚生労働省 第7次看護師需給見通しと就業者数

一方、東京都では平成22年に発表した看護職員需給見通しの中で、平成27年に看護師の需給バランスは均衡がとれるとしている。

東京都看護職員需給見通し

出典:東京都看護職員需給見通し

しかし、この資料では再就業者、つまり復職する潜在看護師を毎年1万5千人程度見込んでいる。まだ平成27年度の結果がでていないのでなんとも言えないが、果たして需給バランスはとれたのであろうか。

東京都看護職員需給見通し

出典:東京都看護職員需給見通し

2-2 看護師の全国動態

全国的にみると、病床数に対する看護職員の数はほぼバランスが取れており、東京も全国平均を上回っている。しかし、対人口比となるとばらつきは大きく、特に首都圏では全国平均を大きく下回っている。

病院勤務看護職員数

転職

看護師・准看護師数

出典:厚生労働省 看護職員の現状と推移

一方で新卒看護師の就職数についてみてみると、やはり東京都が突出している。東京都内の卒業者が全国で最も多く、他県の卒業者も東京の医療施設に多数就職するからなのだが、それでも前述したように人口当たりの看護職員は不足したままなのである。

卒業者数

出典:厚生労働省 看護職員の現状と推移

看護師不足の原因は、東京都の人口が多いということもあるが、加えて東京都内に勤務する看護師の離職率の高さも一因となっている。平均離職率だけをみれば、突出して高いというわけではないが、就業人口の多い東京や神奈川で離職率が高いということは、離職者の実数としては相当数に上る。ちなみに、東京では毎年1万8千人近くが離職しているのである。

看護職員離職率

出典:日本看護協会ニュースリリース

また、国立や公的医療機関に比べて一般法人や個人病院での離職率が極めて高く、特に新卒看護師の離職率の高さが突出している。医療法人や個人病院は板橋区、足立区、江戸川区などの下町に多いが、なんと、個人病院に就職した新人看護師の実に2割が離職しているのである。

設置主体別看護職員離職率

出典:日本看護協会ニュースリリース

離職した看護師、特に新卒で1年以内に離職した看護師は復職する割合が極めて少ない。厚生労働省による診療報酬の引き下げや、看護体制の改定などの措置によって経営難に陥り、現場の労働環境が悪化した病院は多い。医療費削減のために切り捨てられた病院は数知れず、不幸にしてそのような施設に就職した新卒看護師は2度と看護の世界に戻っては来ないだろう。

3-1 病院で働く看護師が余る!?

東京都だけでなく全国でも未だに看護師不足は続いている。厚生労働省の看護職員需給見通しでも平成27年はまだ1万人の不足だ。長らく続く看護師不足解消のために、大学の看護学部など養成機関は増設され続けたが、その背景には入学者を集められない大学の苦しい台所事情もある。

厚生労働省によれば、看護師の需要と供給はイタチごっこのように並行して伸び続け、ベビーブーム世代が後期高齢者となる2025年の需要は、最大200万人と試算、これに対して供給は180万人に留まるというシミュレーション結果を示した。

20万人もの看護師が不足するのだから、一見して看護業界はまたとないマーケットに思える。これに少子化で入学者を集められない大学が飛びついた結果、全国の大学に看護学部ブームが巻き起こった。しかし、養成機関の乱立は教育の質を低下させるという問題を引き起こしたため、今後は消えていく大学も少なからずあるのではないだろうか。

それにしても、何より問題なのは今後不足するのは病院の看護師ではない、ということだ。厚生労働省が診療報酬に7対1病床を新設したため、大病院を中心に看護師争奪戦が起こり、その結果7対1病床が増えすぎて、過去最大の医療費増大を招いてしまった。

厚生労働省は政策に失敗したかと思うと、反転して7対1病床の削減を始めた。目標は現在の25%減、病床にして9万床の削減だ。単純に計算しても1万3千人の看護師が余ることになるが、最大14万人が余剰となるシミュレーションも存在する。

3-2 訪問看護の需要拡大

とはいえ、看護師全体が余剰になるというわけではなく、あくまでも病院での話しだ。厚生労働省は、際限なく増え続ける医療費を抑制するためには、患者をなるべく早く病院から自宅へ移し、在宅医療中心の体制に転換することだと考えている。

在宅医療の中心はなんといっても訪問看護であり、訪問看護ステーションでの看護師需要は今後さらに増え続けていくだろう。一部の看護師や起業家の間では訪問看護ステーションを新たなビジネスモデルとしてとらえ、ちょっとした訪問看護ビジネス起業ブームが起きている。

これをビジネスチャンスと割り切るか、あくまでも病院の看護師として生き残りに賭けるは個人の考え方次第だろう。ちなみに在宅医療においては医師の診断を肩代わりする看護師を養成する動きもある。

看護師の研修制度

出典:厚生労働省 看護職員確保に関する今般の法改正について

まとめ 病院の看護師として生き残るために

医療コンサルティングの株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは看護師が生き残るための4か条として、
(1)当事者意識を持ったジェネラリストになる
(2)看護部長(看護管理者)を目指す
(3)生き残れる病院を見極める
(4)専門家としての道を極める
を挙げている。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン ブログ

http://www.ghc-j.com/blog/20140812

診療科を問わないオールマイティな看護師を目指すか、逆にひとつの部門に特化した専門看護師を目指すか、病院の看護師にとって両極に答えがあることを示している。なるほど、これは正しい選択肢なのかもしれない。しかし、患者目線で看護を考えると、もう少し別の看護師像が浮かんでくる。

それは確かな技術としっかりした基本を併せ持つ看護師だ。点滴や注射ひとつとっても看護師によって技術レベルには差があるものだが、患者から信頼されるのはやはり確かな技術を身につけているナースだろう。

投薬時のオーダー確認はもっともヒヤリハットが起こりやすく、バーコードによる管理や確認の徹底がされているにもかかわらず、やはりミスは起こる。だからこそ、ミスに対する危機感を常に持ち続けきちんと手順を守る。当たり前のことなのだが、基本に忠実なナースこそ、患者にとって頼れる看護師なのである。

こうした基本的なことをひとつひとつ積み上げていくことで、患者からも病院からも信頼される看護師になれるのではないだろうか。看護師が病院で生き残るために必要なこと、それは「なくてはならない看護師」になる道を選ぶこと。東京の病院に求人を求めるのであれば、ぜひとも「オンリーワン」の看護師を目指してがんばって頂きたい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>