看護師の仕事は独自の専門的知識・技術に基づく専門職

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キャリアアップする看護師

病院経営の重要な資源に「ヒト」が加えられるのは、病院の経営が人によって支えられているといっても過言ではないからである。お客様である患者に対して、医療サービスや看護ケアサービスを提供するのは医療スタッフたちである。

特に看護部は、病院の中でも人的に最も大きい組織である。人(看護師)が人(顧客である患者)に看護サービスを昼夜提供し、さらには人(看護師)が人(看護実践能力を向上させるための看護師)の仕事の開発や育成を担う。

このように「ヒト」が重要な資源であり、管理の対象となるのである。と同時に一方では、今病院組織においてヒューマンリソースマネジメントを推進していかなくてはならない外部的・内部的な環境変化が存在するのも事実である。

看護職は専門職である

昔から医師、法律家、聖職者などが「専門職」として承認されてきたが、そのなかで「看護師の仕事は専門職か」という問いが長く続けられてきた。専門職とはいわゆる“prOttsiOn”のことであり、そこにはおのずと備えていなければならない基準がある。

その基準を示す

  1. 独自の専門的知識・技術に基づく仕事に従事する職業であること
  2. これらの知識や技術は、長期の教育訓練でなければ獲得できないものであること
  3. その実践の基盤となる専門知識体系と教育体系を有していること
  4. 社会の安寧と公共の利益を目指したサービスと貢献であること
  5. サービスの提供にあたつては、プロフェッショナルとしての倫理的規範に従うこと
  6. 職務活動において自律性を有すること
  7. サービスを提供するための能力、倫理的規範、自律性を維持するための専門職組織と倫理規定が存在すること
  8. 専門性・倫理性を保証する免許や認定の制度を備えていること
  9. これらの領域には独占的権限が伴うこと

現在は、医学技術の進歩や高齢者の増加、疾病構造の変化、保健・医療・福祉の統合化が進み、患者・家族の意識が高まるなか、看護師の専門能力に期待する社会の要請はますます強まってきている。

また、それらに対応しなければならない社会的責任も看護師の仕事には求められている。さらに、保健。医療・福祉環境の変化は急速で、看護師に求められる専門職としての能力は、今後ますます多様多彩になっていくものと思われる。

専門職の基準をみると

①の看護師という独自の専門的知識・技術にもとづく仕事に従事し続けるためには、②のように長期の教育訓練が必要となる。

これは、基礎教育もさることながら、ひとたび免許を獲得した後の継続教育を生涯続けなければならないという意味である。そのためにも、①のように専門知識体系と教育体系について他の医療職に負けないような看護師の仕事の場の整備を行い、自律的にキャリア開発を進めていく必要がある。

さらに、専門職である看護師の仕事の知識・技術・態度を絶えず維持・向上させていくためには、基礎教育を終了し、免許を獲得した後も、生涯継続教育を自らに強いていくのが専門職の姿である。多くの看護職は、医療機関などに勤務する組織人としての生き方を選ぶ。

その場合、看護師の仕事としても自覚とキャリア開発の視点が重要である。

看護職員・看護チームを

商品ととらえる経営戦略医療あるいは看護は本質的にサービス業であり、個々の看護職員および看護チームそのものが病院の商品であると考えられる。より詳細にいえば、看護職者の個々の看護実践能力または看護チームとしてのサービスアウトカムや看護サービスヘの取り組み姿勢が、看護サービスの良し悪しに、あるいは病院の収入そのものに影響するものと考えられる。

医療費抑制政策のなか、病院のような非営利組織においても、経営には戦略思考が必要とされ始めた。病院において経営戦略とはどのように考えられているのか。

戦略マネジメントシステムとして提唱されているのは、「顧客」「財務」「内部プロセス」「学習と成長」の4つの視点から立案した戦略目標を用いて組み立てる「BSC」という仕組みである。

企業のミッション、 ビジョン、戦略を全スタッフに浸透させ、一丸となって組織が目標達成に向かうための仕組みとして紹介されている理論だ。

最近では、組織内で経営戦略に関する情報を共有する戦略コミュニケーションのツールとして評価されるようになってきた。これらの考え方は非営利組織においても必要なこととして認識され、政府や自治体、教育機関や病院などでも広く受け入れられるようになった。

なかでも「学習と成長」は病院の提供する医療の質を基盤から支えるものであり、長期的なあるいは短期的な視座で取り組んで行く、 まさに職員のキャリア開発の視点である。

看護師の仕事は病院のコア的な仕事

UFJ総合研究所(現。三菱UFJ総合リサーチ&コンサルティング)の調査結果)を紹介する。

病院の収入に対する人件費率は50%以上で、一般企業と比較してもその比率は高い。さらに、病院における人件費の高い主な職種は、医師と看護師である。

マンパワーの面で看護師が組織の半数を占めているし、医師は高額な設定にしてある。とりわけ、病院全体の人件費をどの職種が占めているかをみれば、看護師は病院全体の45.8%を占め最も多く、次いで医師が27.7%を占めている。

業種別人件費率

業種別人件費率

*病院の数値:全国公私立病院連盟に加盟する団体に所属する病院,社団法人日本病院会に加入する病院.本調査に協力する病院の医業収益に対する給与費全額比率の平均〈調査時期は2004年6月)
*病院以外の数値:5取引上場会社の2004年4月~2005年3月の単独決算数値における売上高人件費比率の平均
*全体・私的病院:医業収益100対給与費金額割合
(「2006年度日経経営指標, 日本経済新聞社/平成16年病院経営実態調査報告.全国公私立病院連盟」のデータをもとに
U可総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)作成〔出所:栗原誠一郎.上野佐保.「病院経営における人材マネジメントのあり方」,UFJ Institutc REPORT.10(4),p.10.2005,2〕より転載)

職種別人件費率構成比率

職種別人件費率構成比率

*数字は各職種100床当たり職員給与費の合計額に対する割合を示したもの
*私的病院のデータは,病院全体のうち.医療法人,個人,公益・社会福祉法人のもの
*医師:歯科医師含む/医療技術員:薬剤師などの医療技術業務に従事する有資格者/技能労務員:看護業務補助者など
(「平成16年病院経営実態調査報告.全国公私立病院連盟」のデータをもとにU可総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&
コンサルティング)作成〔出所:粟原誠一郎,上野左保,「病院経営における人材マネジメントのあり方」
・U]InSumtc REPORT.10(4).P12.2005,12.〕より転載)

看護は病院サバイバルのカギ

医療界は今、転換期に直面している。診療報酬がマイナス改定になるなか、いままでのようにただ熱心に医療に取り組んでいるだけでは、将来的に経営に不安がある状況である。

診療報酬評価上のカギ

看護師の人員配置は、医療法により患者人数に対して何人と、法律で定められた人数以上の人員を配置することが義務づけられている。看護師の人員配置基準は、病院の収入源である診療報酬と関係しており、2006年度の診療報酬改定ではマイナス改定が施行されたにもかかわらず、看護師の仕事は評価され、より手厚い看護の配置基準が設けられた。

一般病棟の最上級区分になる実質

配置7対1が新設されて4ランクになった。それまでは実質配置10対1程度が最も高かったので、 これにより病院はより手厚い配置ができるようになった。ただ、充実した配置をしようと上のランクの配置基準をめざさなければ、現状よりも診療報酬が減る仕組みが設けてあるので、看護師確保は診療報酬増減のカギともなっている。

しかし、単なる看護師の頭数合わせに終始する人材マネジメントでは、看護師の“個の尊重”は全くあり得ず、看護師の能力開発、人材育成に関する課題は未解決のままとなってしまう。

これからは、看護師の絶対数を確保する努力とともに、 目先にとらわれることなく、有能な人材の確保、定着率のアップ、看護師の仕事の質向上のための能力開発などを推進するための、ヒューマンリソースマネジメントシステムの考案と構築、導入がなされなければならない。

また、単に配置基準の問題のみならず、看護師の仕事は今やチーム医療をまとめ、コーディネーターとしての役割を獲得しつつあり、チームを牽引するうえでのカギともなっている。

看護師の仕事は、感染チーム、医療安全チーム、褥創チーム等々、他の専門職を束ね、専従や専任のポストを獲得しているのは看護師が最も多い。これはすなわち、受益者にとって最も身近で総合的にサービスを提供できる職種は誰なのだといえば、それは看護師だということである。

こういう例もある

某病院看護部の副部長がいる。彼女はBFH(Baby-Fricndly HosPid:赤ちゃんに優しい病院)であることの第3者評価の取得をめざし、助産師たちを中心に医師、コ・メディカル、事務職員などとプロジェクトチームをつくり、BSCで戦略目標を定め、「顧客」「財務」「内部プロセス」「学習と成長」の4つの視点から目標計画を作成し、プロジェクトを中心にBFHを取得してしまった。

この結果、病院職員の士気は向上し一躍注目される病院となった。このように、病院機能評価においてもBFHの取得においても、病院の変革には必ず要となる看護職が存在する。

まとめ

職種別職員構成比率では、看護師は55.8%で病院職員全体の約半数を占め、人件費の面からも職員数の面からも、病院における最大のコア人材であり、看護師の仕事が病院の優劣を決める際の指標ともいえる。

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