外来看護師の地位向上をするための業務改善の概略

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外来看護の看護師

従来の外来診療の現場では、施設差があるとはいえ、看護師の仕事は医師の診療の補助や患者の呼び出し、 カルテ整理、注射や点滴の準備・後始末などの業務がほとんどであった。

病棟の看護業務に比べ、外来看護業務は基準化されていない施設が多くもあった。なかには、産前産後の時短業務しかできない看護師の溜まり場のような扱いを受けている施設もあったと聞いている。

1999年頃、ある調査によると某病院の内科外来の看護師たちは、外来看護の業務改善を目的に、現状の実態を把握しようと外来業務量調査を行った。その結果、外来看護業務の内容は、患者に直接接する業務は少なく、 レントゲンフィルムの用意や診療の補助、掃除や雑用が主で、診療の補助以外は看護師でなくともできるものだった。

彼女たちは、患者が本当に必要としている看護を外来では行えていないのではないかとの見地から、病棟の退院時カンファレンスに参加して患者指導の充実を図るなど、外来看護の業務改善をめざしたのだった。

外来看護の定義
疾病を持ちながら地域で療養・社会生活を営む患者やその家族等に対し、安全で・安心・信頼される診療が行われるように、また、生活が円滑に送れるように調整を図りながら看護職が診療の補助や療養上の世話を提供することをいう。
看護外来での看護は、外来看護の中に位置づける。
日本看護協会

事在院日数短縮に伴う役割の変化

しかし近年、外来看護事情は大きく変わった。電子カルテの導入、在院日数の短縮に伴う外来での濃厚な治療、地域との連携など、いわゆる入院前から在宅までの全体を通じた期間の中で、入院期間はどんどん短くなった。その分、外来にかかる比重が増してきているのである。

看護の立場でいえば、外来での継続治療・看護が必要な患者が増え、再入院を予防するためにも、外来での療養に専門的な看護知識を用い、時間をかけてかかわる場面が増えてきたとぃぅことだ。さらに、診療報酬では在宅療養指導料や摂食機能療法など、看護ケアが経済的評価を受け算定される項目もできた。

看護専門外来の開設

そのようななか、看護専門外来と称して「高齢者看護専門外来」「糖尿病指導外来」「在宅酸素指導外来」「ストーマ外来」を開設した長浜赤十字病院のような例も出てきている。平塚共済病院では、「喘息患者を支援する外来看護システム」や「病棟と外来、外来と地域をつなぐ看護の充実」への取り組みとして、「糖尿病患者を支援するシステム」「外来化学療法に移行する患者の支援システム」などを導入し、患者の療養生活を点から線へとつなぐ看護のあり方を推進している。

助産師も妊婦のニーズに対応するため「助産師外来」を開設、運用してきたが、近年は院内助産院の開設も紹介され始めた。これからはこうした例も増えるだろう。

このように、これからの外来看護師、助産師には、最適な受診行動を判断できる能力や、患者のニーズに沿った対応のできるケースマネジャーやコーデイネーターとしての能力が求められてきている。

今や外来では、外来看護における新たな役割を開発し、それに向けて専門能力を発揮していこうとする機運が盛り上がっている。看護師がわき役でなく「主役」として活躍していく場を自分たちの手で勝ち取っている良い例であろう。

経営者に看護師を登用

日本経済新聞2007年5月19日(土曜日)19)によると、看護師を副院長に起用する病院が過去3年で3倍に急増したという。全国病院事業管理者等協議会の調査では、2007年5月1日時点で3年前の3倍超にあたる168施設で看護師が副院長に就いたとされた。病院運営の要職である副院長に、医師ではなく看護師を据えることで、患者本位の医療をめざそうと考えられ始めたのだ。

この傾向は、独立行政法人化や赤字経営などで改革を迫られた大学病院や自治体立病院で目立ち、2004年の全国調査では51施設だったが、05年は75施設、06年は115施設と一貫して増加。大学病院では、07年には04年の3施設から28施設へと約10倍に増え、全国で126施設ある大学病院の約2割を占めた。

不採算部門を多く抱え赤字経営に陥りがちな自治体立病院も、同様に14施設から43施設に増えた。その後もこの傾向は続き、2010年には300人を超えるに至った。

看護職の地位確立へ

看護部長と副院長の違いについては、立ち位置や視座の違いからくる意識的な変化を迫られることで、視野が拡大し、情報の質・量の重視とその活用が問われるようになることを小路氏は述べている。キャリア開発のシステム構築や看護職の地位確立のための交渉においては、副院長ポストは有効な役割を呆たすともいえるだろう。

とにもかくにも、今日病院は経営の重要さに目覚めた。必要なのは優秀な経営陣であり、看護師に副院長のポストを与えたら極めて優秀な人材が多かったという結果である。これは今後、看護管理における優秀な人材は、職種を越えて抜擢していくという道が模索され始めたということだ。

管理者の認定を受けた看護師は日本に1、307人(2012年2月現在)存在するが、経営陣に参画する最も有力な人材とみなされるような存在にならなくてはならないであろう。

開く看護師格差

先述したように、看護師という限定された職業においても、専門化傾向や看護師起業家の登場、経営者としての参画など、新たなるキャリアヘの挑戦と職業的自立は今までにない勢いで進んできている。さらに看護師、医師、メディカルという職業的な枠組みに収まらない、 さまざまな新しい職種も台頭してきている。

看護職の給与は、初任給は高めでスタートするものの、他の職種と比較して給与が上がりにくいのが特徴です。他の医療職種との比較グラフを見ると、看護師の給与は上昇率が低くなだらかなカーブを示すため「寝たきりカーブ」と呼ばれたりもします。

看護師の供与水準のデーター出典:看護職の給与事情データ | 日本看護協会

このような時代は、組織が看護師個々人のキャリア志向を的確にとらえ、組織のために活用する手だてを考える時代であるといえる。その手だてが、 また看護師個々人を触発し、発奮させるという良い循環を作っていくのかもしれない。

格差の背景

看護師個々人に視点を置くと、 このような時代を先取りし、 自律的にキャリアを発展させていく人たちは、多くの看護師集団の中でもまだほんの一握りの存在である。

20代後半から30代にかけての看護師は、女性が多いこともあって「結婚」「出産」「育児」というライフイベントが生じ、組織の中では中堅看護師としての責務も多く、その結果、仕事か家庭かの2者択一を迫られやすい。多くは、いったん職場を離れそのまま潜在化してしまう者、あるいは働きやすさの条件を優先しパートタイマーなど非正規職員の短時間労働を選ぶ者のいずれかになってしまう。

日本では、55万人とも60万人とも推計される潜在看護師の存在が問題視されているが、潜在看護師に関する調査結果では、その70~ 80%が「看護師として働きたい」という考えを持ちながらも、現実的には職場に正規職員として短時間労働が可能な環境整備がなく、しかも再教育の機会も少ない状況のなかで、潜在化してしまっている現状が浮かび上がっていた。

このように、ひと口に看護師といっても、組織内でキャリアを自律的に開花させていく者、独立する者、潜在化して仕事をしばらく据え置いている者、あるいは非正規職員の立場で短時間労働に従事し生活の均衡をとる者と、その差はまことに多様多彩である。

免許制度の考え方

格差を生む背景には、このような地域や職場の支援環境の不十分さというものの影響があるが、 もう一つの側面として、この国の専門職の免許制度に関する考え方の影響がある。日本では、看護職は国家資格を得た専門職であるとはいえ、終身免許制度である。一度取ってしまえば更新する必要はない。

しかし、基礎教育を終えたばかりでの免許の取得は、看護師という専門職のスタート地点に立つ資格が与えられたに過ぎない。運転免許においてさえ更新制度があるにもかかわらず、人の命を預かるこの仕事に免許更新制度がないことは、考えてみればおかしな話である。2007年には、教育改革関連法のひとつ「改正教育職員免許法」において教員職には免許更新制度の導入が決まっている。

このような動きがあるなかで、専門職であるとはいえ、医療職であるわれわれは、個人の自律性や施設における集合教育制度、定期的ローテーションに専門性や資質の維持・向上などを委ねてしまっているわけである。

自律的にキャリアプランを立てて必要な継続教育を選択して能力向上をさせていくことは、専門職の条件ではあるが、今の医学の発展や世の中の動きのスピードに太刀打ちしていくためには、従来の個別的なやり方ではやはり限界があるのではなかろうか。

免許更新制度に看護継続教育を組み合わせた中国

2002年より中国の看護職との交流が始まり、現在まで続いている。そのなかで、合理的かつ質の向上に貢献している制度に驚いたことがある。

中国では1993年に中華人民共和国護士管理弁法(看護師に関する法律)が改定、2年ごとの免許更新制度が定められ、1997年には看護継続教育の体系化が導入された。免許更新時には、50単位の定められた継続教育の単位取得が必須条件となっている。

そのような制度の下で、中国の看護職の昇進システムでは、専門職としての能力段階を示した学分管理制度というラダー(はしご・階段)が定められており、この段階をステップアップするにあたっては厳しい審査がある。

さらに、その能力段階に応じた継続教育の単位の取得は個々の看護師の取り組みに任されている。

このように、 日本と中国を比較した場合、キャリアアップや資格取得のシステムにかんしては、中国のほうが日本より先に進んでいるといっても過言ではない。

2004~ 06年にかけて筆者は、看護専門職にとって重要な役割を持つ看護継続教育制度の違いを概観するなかで、両国の看護職の継続教育ヘの取り組みや専門職的自律性の実態、およびそれらに影響する要因を明らかにすることを目的とした研究に取り組んだ。調査結果は、文化の差があリー概には比較できないが、面白い結果となった。

日中看護師の自律性の比較

まず、専門職としての自律性得点は、中国の看護師のほうが日本の看護師より高かった(対象:同規模で中核的な公立急性期病院の看護師)。さらに、自律性の高さに関係する要因として、日本の看護師は学会参加や看護専門誌の購読、職務満足度を挙げたが、中国の看護師は看護師以外の業務からどれくらい開放されているか(言い換えれば看護師業務にどれほど専念できているか)や、看護師長の管理スタイルなどに影響を受けていることを挙げた。

日本のように継続教育が免許更新の受験条件とならない国では、継続教育を課すこと自体(学会参加や看護専門誌の購読)が個人の自律性にかかっているわけであるが、免許更新条件に受講すべき継続教育の単位が決まっている国では、自律性はそういう点に影響されるものではないようだ。

まとめ

継続教育を自らに課していくことは当たり前のことで、むしろ医師に従属的な業務から逃れて看護師らしい働きができたり、直属の上司のマネジメントの良し悪しによって自律性が変わっていくという点が明らかになった。

これは大変興味深いことである。

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