看護師勤務体制から学ぶ心身の疲労回復の9原則

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看護師勤務体制からくる心身の疲労

私たちの身体が、体内時計とも呼ばれるサーカティアンリズム(概日リズム)によって、活動と休息とを繰り返していることはよく知られている。

病院勤務の看護師のように、勤務交代制によって生活が不規則になりがちな仕事は、サーカティアンリズムが崩れやすいので、さまざまな危険にさらされることになる。

三交代や二交代といった勤務交代制度によって看護師のサーカティアンリズムが狂わされていることは間違いないのだが、不思議なことに同じ病棟で勤務していても、それほど疲れを感じない人もいれば、ひどく疲れを訴える人もいる。

ある研究結果によると、4年未満の人たちの蓄積的疲労度が最も強く、4年から10年未満の人たちの睡眠感が最も不良であることが明らかになっている。

また、一般的に、夜遅くまで起きていられる夜型の人の方が、朝に強い朝型の人の方よりも夜勤を伴う交代制勤務に適していると言われている。すなわち、看護師としての経験が浅く、そもそも朝型だという人にとって、夜勤はとても過酷だということになる。

サーカディアンリズム(circadian rhythm)

生物に備わる昼と夜を作り出す1日のリズムのこと。ラテン語でサーカは“約”そしてディアンは“1日”を示す。一定の時刻がくると自然に眠くなり、一定時間眠ると自然に目が覚める睡眠―覚醒のサイクルをはじめとして、血圧、体温、ホルモン分泌の変動などが代表的な例である。このリズムが乱れると起こる症状としてよく知られているものが時差ぼけであり、また不眠症やうつ症状との関係も疑われている。ほ乳動物だけではなく単細胞生物にも存在するほか、原核生物であるシアノバクテリアにもその存在が示されている。

出典:薬学用語解説 – 日本薬学会

病院勤務の看護師として仕事を続けるのであれば、いかにうまく夜勤を生活の中に組みこんでいくかが鍵になる。

今回はこの疲労度を解決できるカギを紹介しよう。

身体的に夜勤のできない看護師

いくら夜勤がきつくても、病院に勤務しているかぎり、夜勤を避けて通るわけにはいかない。

看護師交代方式のモデル

看護師の勤務交代方式のモデル図解

看護師に夜勤がつきものだということを考えれば、夜勤ができない看護師には、どこか王道から逸れてしまっているような、そんなプレッシャーを与えかねない。

「夜勤ができない」という言葉はよく耳にするが、それには3通りの意味がある。

1つ目は、身体的に夜勤ができないという意味だ。

先に述べたように、夜勤によるサーカディアンリズムの変化を強く受ける人にとって、勤務交代制はつらい。そもそも朝型の人が夜通し起きているだけでもたいへんなのに、夜勤明けに日中寝るように言われてもそれもできない。

朝に寝るという習慣がないから眠れないためだ。そうして疲れがとれないままに日々を過ごし、疲労が蓄積することになる。

2つ目は、家庭があるので夜勤ができないという意味だ。

体力的には問題なくても、子育てや配偶者等との生活バランスを考えると、夜に出かけるのが物理的に、あるいは心理的にも困難なことがある。家庭と仕事が両立できればそれに越したことはないだろうが、周囲の理解が必要だ。家庭生活と仕事生活のバランスに関しては、これから先の記事で取り上げるつもりだ。

3つ目は、能力的にできないという意味だ。

夜勤帯には十分なサポート体制があるわけではない。それを十分に理解した上で夜勤の人員編成がなされているわけだが、時折、夜勤についてもらうにはあまりにも危険が大きいと判断せざるを得ないような人がいる。看護師になって間もない新人たちのほとんどがそうだ。

徐々に夜勤業務に順応させる

これら3通りの夜勤困難組のうち、家庭との両立が難しい人は、一定期問、外来などで日勤帯のみの勤務に移るのが一般的だ。外来に勤務しなが
ら家庭生活を一定のパターンに保ち、それと同時に周囲の理解を求めるように働きかけながら病棟に戻る調整を行う。

能力的に夜勤ができない人に対しては、多くの場合、日勤業務の流れがだいたいわかるようになった頃を見計らって、夜勤のシフトが少しずつ組み込まれていく。すぐには無理でも、サポート体制を敷きながら、徐々に夜勤業務に順応させていくことで、できないことをできるように訓練していく。

身体的に夜勤ができない看護師への対応

さて、最もやっかいなのが、身体的に夜勤ができないという人たちだ。

夜勤は、夜型の人にとっても、けっして楽なものではない。誰にとっても厳しい勤務帯なので、身体的につらいことを夜勤ができないことの言い訳には使えない。

そんな言い分を管理者が「はい、そうですか」と聞き「それじゃあ、どうぞ休んでください」なんて言おうものなら、夜勤をする人がたちまちいなくなる。

つらい夜勤だからこそ、皆が交代で行なっているわけだから、自分だけがつらいと叫んでも、よほどの身体症状が出ないかぎり誰も相手にしてくれない。

勤務交代と疲労対策

交代制勤務が身体に負担をかけていることは、火を見るよりも明らかである。そのため、少しでもそれを軽滅するための提案がたくさんなされている。

看護師(他業種も含む)の労働時間の構造

労働時間の構造図解

特に目をひくのは、1982年に提案されたルーチンフランツによる9原則だ。この原則の特徴は「夜勤交替勤務者の生体リズムの乱れ防止、夜勤負担の軽減および疲労の早期回復のみならず、家庭生活や社会生活上の不利益の是正も含めた総合的な指針を打ち出している点」だというから、夜勤を行う者にとってほかなり助けになりそうである。

ルーチンフランツの9原則

原則1 連続夜勤は2~3夜にすべきである
原則2 日勤の始業時刻は早くすべきではない
原則3 勤務の交代時刻は個人に多少の弾力化を認めるべきである
原則4 勤務の長さは労働負担により決め、夜勤は他の勤務より短くすることが望ましい
原則5 10時間未満の勤務間隔時間は避けるべきである
原則6 少なくとも2連休の週末を含む休日を配置すべきである
原則7 交代方向は正循環が望ましい
原則8 交代の1周期はあまり長くするべきでない
原則9 交代順序は規則的に配置すべきである

9原則を犯さざるえない現実

たとえば、8時半に日勤が始まるといっても、1時間近く前から情報収集のために集まってくる看護師たち。専門職として必要な業務をこなすためだとはいえ、自ら原則2を脅かしていることになる。

また、勤務交代を決められた時間に一斉に行うことが習慣になっている看護の仕事は、個人ごとに異なる勤務時間を設定して働くという原則3はにわかには受け入れられないだろう。

原則4に基づいて、日勤と夜勤の勤務時間の長さを考えてみよう。三交代では両者の時間は同じだし、二交代ではむしろ夜勤の方が長くなることもある。

夜勤中に疲労がたまることはわかっていても、日勤を終えた人がその後の時間をゆっくり過ごせるほうを優先するのなら、夜勤が長くなるのは致し方ない。

勤務と勤務の問は最低10時間あけることが原則5であるが、日勤の後の深夜入りや、準夜の後にすぐ日勤がくるという勤務交代制はいたるところで見られる。

たとえ残業がなかったとしても、次の勤務までには8時間しがない。原則7には正循環という言葉がみられるが、これは、朝・昼・夜という1日の流れにそった順番(循環)で交代していくことで、具体的には日勤→準夜→深夜→日勤のサイクルをさす。

それぞれの勤務帯を1日ごとに変える必要はなく、原則1に従いながら、2日ずつあるいは3日ずつ行なってもよい。しかし、実際には、逆循環と呼ばれる日勤→深夜、深夜→準夜、準夜→日勤という勤務交代が行なわれている。

仮眠の必要性と対策

その他の対策として、仮眠の必要性はかなり強調されている。だが、仮眠場所の確保が困難であったり、睡眠惰性(起きた後にも眠気が続くこと)への対処が容易ではなかったり、職場内で仮眠に対する理解が得られにくい状況があることなどが指摘されている。

さらに、仮眠に対する捉え方に個人差があり、仮眠が許されていても敢えてともない人がいることも仮眠対策の限界だと述べられている。

まとめ 交代制勤務は必要か?

このように考えると、勤務交代制が看護師の疲労を高めているとわかっているのに、どうして大事だとされている対策をことごとく活かさないのかと考えるとやるせなくなる。

現場の管理者が、限られた人的資源の中で交代制勤務のやりくりをする苦労ははかり知れないが、看護師が長く勤務を続けられるための対策に知恵を寄せなければ、本当にいつか看護師が現場からいなくなってしまう。

とは言え、望ましい勤務交代が行なえない理由を根っこから考えると、やっぱり看護師の人数が足りないというところに行き着いてしまう。余りある人員が備わっていれば余裕をもって勤務を組めることだろう。だが、それは当分望めない。そうすれば、交代制勤務の制度そのものが前提としていることを変更することも考えなけれぱならない

その前提とは、看護師は皆”平等、公平に”勤務を負担するということだ。これが「看護師は夜勤ができなくてはいけない」という考え方や、「3交代や2交代などによって一斉に交代時間を設定する」という考え方に結びつく。

静まりかえった深夜の病棟

ある病院で、1つの病棟で、2交代と3交代の両方を採用しているという管理者の話を聞いたことがある。2交代を望む看護師と3交代を望む看護師がうまく話し合って調整したら、それが可能だったということだ。

考えてみれば同じ病棟内では1つの勤務形態しか採り入れられないと思い込んでいただけで、工夫できることもまだあるかもしれない。

また、各看護単位が曜日ごとの業務の見直しを行ない、どの時間に何人くらいの人員を必要とするのかを割り出して、その時間にはより多くの看護師が配置できるようになれば効率的だ。

そのためには、従来の一斉交代制度ではなく、3時間勤務の看護師、6時間勤務の看護師など複数の勤務パターンを設定してフレックスに勤務する方法(ルーチンフランツの原則)を考えなければならない。

今でも半日勤務や早出・遅出勤務などはあるが、それらをより柔軟に組み入れるというイメージだ。多様な働き方を採り入れることに伴って給与体系の見直しも必要になろう。

病棟が再編成されたり、混合病棟化が進んだりする中、業務量も日々めまぐるしく変わり、その測定はままならないかもしれない。労働時間に応じた給与にするための給与体系の見直しなど、とんでもないのかもしれない。

だが、サービス残業が常態となっているのは、勤務交代制度と業務量が合っていないからである。社会的な使命として、看護の仕事がら夜勤はなくならないが、看護の仕事がら残業をなくすことはできるはずだ。

今のままの残業付き交代制勤務に、長く働きたいと願う看護師の生身の身体を合わせるには限界がある。

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